日本から米国に投資をする場合に必要となるのが、米国の銀行、証券会社。
米国では、銀行口座を開く時もSSN(ソーシャルセキュリティーナンバー)を要求されます。
そのため、日本に住んでおり、SSNを持たない日本人にとっては米国での銀行口座開設は一つの例外を除いてハードルが高かったです。
一つの例外というのが、三菱UFJフィナンシャル・グループが2008年に買収したユニオンバンクでの口座開設。
ユニオンバンクは、三菱UFJ銀行に口座を保有している場合に、簡単に口座開設することができました。
ただ、今回記事で取り上げたのは、三菱UFJフィナンシャル・グループがユニオンバンクを売却することになったためです。米国投資を日本から行なっている方や、今後行おうとしている方にとっては大きな影響があります。
今後の口座や日本語サービスについて、他の金融機関での事例からパターン分けして記載しております。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-09-21/QZRUDGT0G1L701
三菱UFJフィナンシャル・グループのプレスリリース
2021年9月21日時点で三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)からユニオンバンク(MUB)のU.S. Bancorp(USB)への売却について、プレスリリースが発表されております。売却自体は公式発表されており当局の認可待ちとなります。
プレスリリースの中で、リテール(個人向け)のサービスについて言及している箇所を探しました。
MUFG および USB の両社は、本株式譲渡の実行までの間に、本株式譲渡後一定期間における Transitional Service Agreement(TSA)および Reverse Transitional Service Agreement(RTSA)を締結することを予定しており、現在 MUB で行っているお客さまとの取引を、本取引後においても MUB および/または三菱 UFJ 銀行にて円滑に継続し、さらに質の高い金融サービスを提供することが 出来るよう、今後両社で協働してまいります。
プレスリリースの中で、現在MUBで行なっている顧客との取引について、継続できるように協議されていることがわかります。
パターン1 日本の居住者の口座閉鎖(日本の居住者)
最悪なケースとなりますが、日本の居住者で米国のSSNを保有している場合に、口座の閉鎖が要求されるパターンです。
既にローンを組んでいたり、口座を活用されていたりする方がいるため、利用者の保護の点からも、可能性は低いのでは無いかと考えております。
パターン2 日本から新規口座開設ができなくなる
新規口座開設ができなくなるパターンです。プレスリリースにおいても、現在MUBで行なっている取引について継続できるように協議する旨の記載があり、既存の口座については継続できる可能性があるかと思います。
この場合には、既存の預金者への影響がポイントになってきますが、特に日本人にとって影響が大きいのは、日本語サービスとなります。
パターン2-1 日本語サービス無くなっていく
香港などでは日本人預金者は、手間がかかる割に収益性が高くなく、あまり歓迎されていないという話も聞きます。ハワイで日本語でのサービスに力を入れていた銀行も、日本語サービスから撤退しており、ユニオンバンクについても日本語サービスが無くなっていく可能性は十分にあると思います。
この場合は、英語力が無いため日本語サービスを前提にしていた預金者にとっては、取引を続けることが非常に厳しくなると思った方がいいです。
久しぶりに口座にログインしようと思ったら、ログインできず、パスワードがロックされたので解除したい。
1年間取引がなく、口座が凍結されていたので解除したい。といった事はよくあります。
英語で対応しようと思うとハードルが高く、放置する方も多いです。日本の金融機関とは異なりますので、放置すると必要となる手続きが増え問題は大きくなっていく傾向があります。
英語を流暢に話せる必要はないですが、読み書きは必要となります。コストがかかりますが、サポートできる方等を確保しておくか、海外資産を日本に戻して解約することも検討した方がいいです。
英語でも対応できる場合には、口座を残していいと思います。
パターン2-2 日本語サービスが続く
ユニオンバンクは日本人顧客も一定数おり、MUFGとの買収社との契約で一定の期間日本語サービスを継続させる可能性はあるかと思います。ただ、顧客や資産規模が拡大していくことが考えられないため、サービスは縮小していくのでは無いかと思います。
パターン3 引き続き日本から新規口座開設ができる
引き続き新規口座開設ができるパターンです。口座開設できるだけでも助かる方が多いと思います。ただ、新規口座を開設できる場合でも、日本人にとって影響が大きいのは、日本語サービスかと思います。
パターン3-1 日本語サービス無くなっていく
英語以外の言語もサポートするとコストが上がり、新規サービスの展開においてスピードが落ちますので、合理化の点から、英語でのサービスに絞っていく可能性が十分にあります。
英語で対応できない方は、新規に口座開設を諦めるか、既存の預金者は特に必要がないなら海外資産を日本に戻して解約してしまった方が将来的な問題を残さなくていいです。それか、コストがかかりますが、サポートできる業者等を確保しておいた方がいいです。
英語でも対応できる場合には、口座を残しておいていいと思います。
パターン3-2 日本語サービスが続く
このパターンが理想です。
ユニオンバンクは日本人顧客も一定数おり、日本人で米国に銀行口座を開くなら、ハワイの銀行かユニオンバンクというほど、海外投資の志向がある方々の中では知名度があります。そのため、ユニオンバンクを買収する企業から見て、日本人顧客について収益性が見込めると判断されれば日本語のサービスが継続する可能があります。
MUFGは、ユニオンバンクをUSバンコープに売却する予定ですが、USバンコープの株式2.9%を部取得し資本業務提携を検討しているようです。MUFGが三菱UFJ銀行に口座を保有しており、アンチマネーロンダリングのための本人確認ができている日本人を、ユニオンバンクに紹介するプログラムが残ることを期待してしまいます。
個人的な感想
結局はMUFGと買収する企業との契約が影響してきますが、個人的な感想としては、日本語サービスは将来的に無くなっていくのではないかと考えております。
他の金融機関での事例を見ると英語が前提となり、かつ、新規口座開設ができなくなるパターン2-1の可能性が高いです。
日本の居住者向けに日本語で丁寧に説明してくれる。そのようなサービスは見込めず、自分自身で英語で対応できるか検討した上で口座を維持するか、新規に開設するか決めた方がいいです。
また、海外口座で一番大切なのは、相続時の対応を事前に考えておくことです。本人は対応できても、家族は全く対応できないという事が多いです。
米国に資産を保有する方がなくなると米国でも相続手続きが必要となり、日本では存在しないサインの認証が必要になることがあります。その際に米国の銀行で登録しているサインを活用するので、相続が生じた際に日本にいながらユニオンバンクで口座を開設して、米国の相続手続きを進めることができました。
今後は、米国で相続手続きの中でサインの認証が必要になった場合、SSNを保有していない日本人でも口座開設が可能な銀行を探し、現地に赴いて口座を開設し、サインの認証を行う必要が出てきます。
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