国外転出時課税制度〜海外移住時の資産への課税

ビットコインをはじめとする仮想通貨(暗号資産)の価格が上昇や米国株式の上昇に伴い、資産形成後の生活の拠点を海外に移したり、計画されている方が増えております。多額の資産を保有している方が、海外移住や長期滞在を検討する際に、必ず確認しておきたいのが「出国税(国外転出時課税)」です。

一定の要件を満たす方が日本を出国する際、保有する有価証券などの含み益に課税される制度で、準備なく移住すると思わぬ税負担が生じる可能性があります。
本記事では、出国税の概要から対象者・対象資産・納税猶予制度・実務上の注意点まで、詳しく解説します。

目次

国外転出時課税制度

出国税(正式名称:国外転出時課税制度)は、2015年7月1日以降に国外転出する一定の居住者が、1億円以上の有価証券等を保有している場合に、その含み益に所得税が課税される制度です。

導入の背景には、多額の含み益を抱えたまま海外に移住し、課税を回避するケースへの対応があります。米国・カナダ・オーストラリアなど多くの先進国でも同様の出国税制度が設けられており、日本もこれに倣う形で導入しました。

国外転出時課税制度の対象者

国外転出時において、以下の⑴及び⑵のいずれにも該当する居住者が、国外転出時課税の対象者となります。
(1)所有等している対象資産の価額の合計が1億円以上であること。
(2)原則として国外転出をする日前10年以内において国内に5年を超えて住所又は居所を有していること。

なお、「1億円以上」という基準は、多くの方にとって海外移住の決断を促すきっかけになっているという側面もあります。米国株やビットコイン投資で資産形成を進めている層にとっては、移住のタイミングを意識するひとつの目安となっています。

国外転出時課税制度の対象資産

課税対象となる資産は以下のとおりです。

  • 有価証券(株式・投資信託・社債など)
  • 匿名組合契約の出資の持分
  • 未決済の信用取引・発行日取引
  • 未決済のデリバティブ取引

米国株式については有価証券に含まれますが、対象外となる資産ビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)は現時点では対象資産には含まれておりません。

仮想通貨(暗号資産)が将来的に対象資産に含まれる可能性

現時点では暗号資産は出国税の対象外です。ただし、米国・カナダ・オーストラリアなど諸外国の出国税制度ではすでに暗号資産が課税対象に含まれており、日本でも将来的に対象資産へ組み込まれる可能性が指摘されています。暗号資産を多く保有している方は、今後の税制改正の動向を注視しておく必要があります。

納税猶予制度

海外に一時的に引っ越すものの、日本に帰国する意志がある方には納税猶予制度が設けられております。

国外転出時までに納税管理人の届出をした方は、確定申告期限までに確定申告書の提出をし、納税猶予分の所得税及び利子税の額に相当する担保を提供することにより、当該所得税の額について納税が国外転出から5年間猶予されます(猶予期間中は、各年の3月15日(土・日曜日の場合は翌月曜日)までに継続届出書の提出が必要です。)。

また、長期海外滞在が必要な状況にある場合は、納税猶予期間の延長の届出をすることで、更に5年間納税猶予期間を延長することができます。

海外移住は簡単で難しい

海外転出自体は理論上は簡単に行うことができます。ただ、実際には家族構成、資産構成、健康状態によって実行や続けることが難しいことが多いです。

海外に1年の半分(183日)以上滞在していれば日本の非居住者になると、滞在日数のみによって居住者と非居住者を判断するものでないので注意が必要です。

海外に1年の半分(183日)以上滞在していても、海外転出時には国内に居住用不動産を有している場合や、家族を国内に残している場合には、転出とみなされず日本の居住者となる場合があります。

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国外転出時課税制度が移住への背中を押してくれる

ここ数年、米国株式ではTeslaやIT系企業の株価上昇が大きく、仮想通貨の上昇などにより、資産形成が進んだ方が増えております。

米国株式や仮想通貨への投資を行なう海外志向の方が多い印象があり、仮想通貨の代表であるビットコインが日本でも話題になりはじめた当初は、個人的な自由、経済的な自由の双方を重視する方々(リバタリアン)で、国が発行するドルでもユーロでも円でもないビットコインに魅力を感じて投資をし、現時点で多額の含み益を有している方も多いです。

国外転出時課税制度が設けられる前までは、海外移住するかどうかの判断の基準となるような値がありませんでした。

これまで漠然と海外移住したいと思っていた方でも、国外転出時課税制度が設けられ1億円という金額基準ができたこと、今後仮想通貨も対象資産として含まれる可能性が、基準値に達する前での国外転出決断の背中を押してくれます。

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